岩小舎 9
岩登りを学ぶ会 備忘録
佐藤仁志(16期)
ロッククライミングを学ぶ会(日和田山11月9日)にCU参加して。

●午前中は、人に少し説明する役割を与えられたお陰でずいぶんと勉強になりました。
 基本的な用語ひとつでも人に分かってもらえるように説明するには、相応の工夫が必
 要だし、何より完全に自分の血肉となっていないといい加減なものになってしまう。

●以下はクライミングの基本用語についての備忘録。
「三点確保」
  クライミングの動作中は、人間の四本の手足のうち常に三本は確保に用いるという
  もの。普通にやればそう意識しないでも自然と三点確保になるはず。むしろ高度な
  クライミングでは二点確保というケースもある。三点のイメージとしては、日常歩
  行が一点確保、これにピッケルが加わって二点確保、そして岩登りが三点確保・・
  ・というように説明すると三点のイメージがわきやすい。三点確保自体は、簡単な
  技術だが、注意事項として以下の2点を指摘する。
  ・危険な三点確保:クライミングの動作中に両足に均等に加重がかかるということ
   はまずないし、仮にそうなった状態は危険と言える。万がーどちらか片方のスタ
   ンスから滑った場合もう片方の足への加重の入れ替えがうまくいかないからであ
   る。
  ・岩に貼り付かない:三点確保といっても加重を支えるのは両の足であって、手は
   バランスをとるための支えに過ぎない。動作も基本的には足で登っていくことと
   して、腕力をセーブしなければならない。岩に貼り付いてしまうと腰が引けて動
   けなくなってしまうし、いたずらに筋持久力の消耗をするだけ。
「バランスクライミング」
  重心の移動のことである。クライミングでは後足を蹴って進む日常歩行と違って、
  踏み出した前足に十分加重を移してから立ち上がる。そのため、腰を踏み出した足
  に乗せて行くことが必要になる。登山道での歩き方に他ならない。
「安全確認」
  自分の踏み出したスタンスやつかんだホールドが安全であることを確かめながら登
  る。これはスタンスであれば足を掛けて静加重をかけていく一瞬のうちに判断する
  し、手も目視どおりであることを同様に確認する。スタンスを踏んでから足踏みミ
  シンを踏むようにして確かめることはかえって滑る原因になる。(細かいスタンス
  ではそんなことはできないのだが)
「スタンス」
  スタンスとして用いる足の部位はまず、栂指丘か小指丘のどちらかになる。登山靴
  の場合は靴先で(足を岩に正対させる)ある。
「ホールド」
  ホールドの基本は、目の高さより上に取らないことである。高いホールドをとると
  腕力に頼りがちのクライミングになる。無論、岩場はいつもホールドが目の高さ以
  下という都合の良いところにあるわけではないので、あくまで基本的な考え方であ
  る。また、より貧弱な腕力を効率よく使うため、脇を締めるようにする。指も同様
  でそれぞれの指をぴったりつけ、親指を添えるようにする方が力が入りやすい。

●ザイルを体に結ぶ際は、トップ、セカンドとも相互に話しかけず、結ぶことに集中す
 る。結ぴ終わったら、相互に結ぴ目を確認する位の慎重さがあってもよい。ダプルエ
 イトノットの末端は15cm程度を残すこと。せつかく残すのだから、フィッシャー
 マンかダブルフィッシャーマンで末端処理をする方がべター。
・なお、スリング類については、アルパインクライミングをベースとして考えるとする
 と、テープスリングは幅15〜20cm程度のテープを1.5m程度に切って使う。
 実際は末端を多めに残すようにするので1.6m位が良いかも知れない。1本はこの
 2倍の長さのスリングを持っているとカラビナ1個で応急の背負い紐として使える。
 またロープスリングについては直径6mm程度のものを同じような長さで使う。ダブ
 ルフィッシャーマンで結ぶのでこれも1.6m位で切った方が良いかも知れない。こ
 の他、つぶれかけたハーケンの穴にも通せるように3mmくらいの細いロープのスリ
 ングも2本は必要。なお、懸垂下降やトップロープの支点として使うためにはあらか
 じめ縫ってあるソウスリングを使うべきかもしれない。

●ロープワークの手順は次のとおり。
 (1)トップが次の確保地点に到着、セルフビレイを取る。→セカンドに「ビレイ解除」
  (セカンドはビレイを無闇に解除しない。確認してから。)
 (2)トップはセカンドのためのビレイボイントを設置する。この間、セカンドはトップ
  のビレイを解除。セカンドから[ザイルアップ」または「ビレイ解除」のコール→
  トップはザイルを引き上げ、ビレイをとったザイルの上に引き上げた余分なザイル
  を交互にかけていく。
 (3)セカンドから「ザイルー杯」のコール。→トップがセカンドのビレイをセット。そ
  の後「登っていいよ」とコール。
 (4)セカンドはセルフビレイを外して「登ります」とコール。トップも念のため「どう
  ぞ」と返事。なお、ビレイヤーの立つ位置については、仮に登摩者が落っこちたら
  どうなるかで決める。セカンドの場合、上に引っ張られるのであらかじめビレイポ
  イントより上に立つことになる。リードの場合、下に引かれるので、ビレイポイン
  トより下に立つことになる。なお、特にリードのビレイについては、セカンドが落
  ちてもテラス等から落ちないようにビレイをとったザイルの長さを調節しておく。
  ビレ−イボイントはーしっかりした立木などを選ぶ。ハーケンやリングを使うので
  あれば、必ず複数ヶ所からとるようにするのが鉄則。

●さて、今回の日和田の岩場の感想であるが、日陰になった部分は岩が濡れていて滑り
 やすかったので、難しくなっていたと思う。登ったルートは全部で4本。前回登った
 ルートとほぼ同じである。1本目は男岩南面の上部のとても短いクラックを抜けるも
 の。上部クラックは腕力で抜けるしかないらしく、あまり美しくない動作になってし
 まった。

●2本目は前回敗退したスラブ状の左を登るもの。体から硬さが取れてここは比較的イ
 メージどおりの動作で抜けることができた。3本目は女岩の右側のルート。前回は比
 較的楽に登ったが、最初の踏み出しの岩が濡れていたためなかなか立てず、非常に手
 こずる。

●4本目は最初の部分がどうしても突破できず、何度か落ちたり滑ったりした。最後に
 ようやく左のプッシュホールドと足の引きつけで越える。あまり階段を上るような三
 点支持動作ばかりが頭にあるとなかなか滑らかな一連の動作ができないということら
 しい。もう少し自由に登ってみることの必要性を感じた。最初の部分を抜けた後はそ
 れほど難しいという記憶はなかったのだが、くたびれていたためか(特に腕)、ひと
 つひとつの動作にどうも自信がない登りとなった。(仮にマルチビッチのルートの下
 の方であまりに手こずってしまうと後のビッチが普段なら何でもないグレードでも結
 構危険な目に遭うことになるかも知れない。)

●あまり、間隔を置くと感じを取り戻すのに時間がかかつてしまう。何とか少なくとも
 月に2回はクライミングの機会を持つようにしないと練習の効率が悪いようだ。

 
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