|
|
岩小舎 9 |
マルチピッチ論 |
平成10年9月24日 机上講座 |
広瀬憲文 |
|
マルチピッチルート(本番ルート)の魅力
マルチビッチとは、2ピッチ以上のルートのことを言います。人それぞれ魅力は異なると思いますが、「岩はビッチを切って、リードして登らないとその楽しみは半分以下となる」が私にとっての基本だと思っています。大自然が長い年月かかって造り出した造形物、それの弱点を見いだして登って行く、こんな素晴らしい魅力にクライマーは何かを感じるのではないでしょうか。
マルチピッチルート(本番ルート)へのアプローチ
数多く登り、色々な事を体感してください。本番ルートは総合的判断が必要です。
・アプローチ、デプローチからルート研究
ガイドブックを良く読んで研究してください。それと同時に最近登った人の情報
を聞いて自分たちで果たして登れるルートなのかを判断してください。特に、天
候の判断とデプローチの判断に迷わないように決断してください
・用具の研究
登翠用具には昔から色々な道具があります。自分たちでルートに出るようになる
ともっと多くの道具が必要になってくるでしよう。登翠用具の貸し借りはなるべ
くしないほうがよいでしよう。特にロープ類は自分たちの命を預けるものですか
ら、個人でしっかりと管理をして行きましよう。
必要最低限の道具をそろえ、そのルートに必要な分だけを持っていけるように日
頃から研究と使い方を熟知しておいてください。
・セプレフレスキューの準備(セルフレスキューとチームレスキュー)
セルフレスキューとは、一口で言えば「自力救助」のことです。(自ら起こした
遭難事故に対して、自らの責任において処理する)言ってみれば当たり前のこと
ですが中々これが出来ません。もしもの時のために日頃から少しずつでも体で覚
えて行けるようにトレーニングして行きましょう。セルフレスキューとは、指導
技術であって予防技術ではありません。
セルフレスキューとは別にチームレスキュー「組織救助」があります。今までは
山岳会単位で組織されてきたが、山岳会の組織がなくなってきた現状では、チー
ムレスキューが今までのようにスムーズに行なえない状態にありますので、自分
たちだけではどうしようもないアクシデントの場合は周りの人の協力を得て、ま
ずは「セルフレスキュー」に努力すべきではないかと考えます。
ルートの取り付きにおいて
目的のルートの取り付きに着いたら、ガイドブックを見てルートの確認をします。OKであれば登攀準備にかかり、Seil(ザイル、独)でAbseilen(アンザイレン、独)してセカンドの人は落石等を考慮して一番良い場所にBilay
Point をつくりSelf Bilayをとり、トップへの確保準備を整えてトップが登って行く方向にザイルがスムーズに流れていくようにザイルをさばいてやることが大切です。
ルート中でのビレーボイントにおいて。
トップは、ザイルの長さを考慮してビレーボイントを設定する。ビレーボイントについたらセルフビレーを取る。Deppel
Seil {ドッペルザイル、独.(ダブルローブのこと)}のどちらかでセルフビレーを取る。その際テラス等の大きさでセルフの長さを決めてフィックスする。セカンドを上げるためのビレーシステム(器具又は身体確保)をつくり準備OKをコールする。セカンドが上がってくるにつれ手繰り寄せているロープが足下にたまってくるとビレーに支障が来してくるのでロープを整理しなくてはならない。岩壁に垂らすか、広いテラスなら多少乱雑でもだいじょうぶだが狭いビレーボイン卜や垂らすことのできない岩場はトップのセルフビレーに振り分けして掛けながらロープをうまくさばいてやる等(他の方法も色々とあるがビレーボイントを設定した時点で判断すると良い)のことがクライミングを安全かつスムーズに行なう上で大切なことである。
つるべで登る場合(トップを交互に交代する登り方)でも、ビレーシステムは基本的に変わらない。上下左右を変えるか、身体の向き等を変えるかである。ロープの流れ上っるべ方式での登り方が、お互いを信頼しあえる最良の方法であると思う。
ダブルロープ(ドッペルザイル)について
・ダブルロープはなぜ必要か、一言で言えば、より安全な登翠をするための他ありま
せん。シングルロープに比べると操作性、取り扱い等に劣るためロープの扱いに熟
知しないとかえって安全を損なう恐れもあります。
・ダブルロープのランニングビレー(中間支点)ダブルロープでのランエングビレー
とシングルロープでのラン二ングビレーとも基本的には一直線上になるように岩場
の形状、次のビレーホイン卜の位置、カラビナ等の数量を良く考えてランエングビ
レーを取って行きます。取り方を誤ると交差したり、セカンドが回収に大変な思い
を強いられることとなりますので注意が必要です。
トラバース(斜め又は、横に移動すること)におけるランニングビレーも取り方は
同じですが、簡単な場所等でビレーの間隔が大きいと墜落時に大ダメージを喰らう
事となってしまいますので、適度な間隔でビレーを取って行く必要があります。
ビレーシステム(確保の方法)と確保器(制動器)について
・トッブへのビレー、セカンドをビレーする方法は確保者の身体の位置、向き等が異
なって来ますが、基本的に変わりはありません。ボディイビレー(体確保)、器具
を使った確保、両方を併用した確保等がありますが、確保方法については文献等で
研究していただくとして、ここでは確保器具について考えてみたいと思います。
以前に比べて、現在は色々な種頸の確保器(制動器)が市販されております。皆さ
んも多用しているのではないかと思われますが、やはりどの器具にも一長一短があ
るようです。私も全ての確保器を使用しているわけではありませんので、あれが良
い、これが駄目とは言えませんが最近の確保器は少し複雑化されてきているような
気がしますので、間違った使い方をすると大変な目に会ってしまいますので、使用
方法を前もってテストしてから本番で使用してください。
・確保器の種類として、ATC(ブラックダイアモンド社)/バリアプルコントロー
ラー(ワイルドカントリー社)/ベットブレーキ(DMM社)/マジックブレート(ニ
ューアルプ社/サレワ社の制動器/8環、等この他にも色々とありますが現在使用
されている中で代表的な物をあげてみました。全ての総称は制動器、つまり制動を
掛けて動きをコントロール出来る器具なので勿論、懸垂器としても使用されていま
す。但し、使い方を熟知した上で使用してください。
広瀬憲文 マルチピッチ論 追加
<マルチピッチでの懸垂下降>
・ゲレンデでの1ピッチ、2ピッチ程度の懸垂下降と異なりマルチビッチでの下降は何
ピッチにも及んでしまうため、下降ポイントの確保が絶対条件となります。登攀中は、
もしもの敗退を余儀なくされる場合もしばしばありますので、果たしてこのルートは
下降できるのかどうか脱出方法を頭の中に入れながら登ってください。
・そのルートを登りきっても懸垂下降で下りる岩場もありますので、事前にルート図集
等で確認をとってくださしい。
・下降するルートの選択、条件(天候状態、岩場の状態、下降ポイントの状態等)を的
確に判断してください。
・懸垂下降での途中停止{エイト環の固定(FIX)}ができるようにトレ−ニングすること。
<怪我人を背負っての懸垂下降>
・基本的には、セルプレスキユー又はチームレスキューとなります。一人で背負って懸
垂下降はほとんど不可能だと思います。登攀中に怪我等をしたらまず周りの人に声え
をかけて救助を要請してください。もしだれも人がいない場合は怪我人の応急処置を
してだれか救助要請に下りてください。
・怪我人を背負っての懸垂下隣の訓練は講習(登山学校カリキュラム)にあるので良く
学習してください。
<懸垂下降中の結ぴ目の通過>
・懸垂下降中に何らかの原因でロープに結び目(ザイルのもつれ)ができてしまったの
を知らずに下りてしまってエイト環が結び目を通らないのでそこから下に降りられな
いなんて事になることもあるかもしれません。そのような時でもあわてる事なく結び
目の近くまで降りそこでエイト環をFIXし、エイト環の上にプルージック等でセル
フを取り完全固定状態で結び目をほどいてください。結び目があると次に降りて来る
人もこまると同時にロープ回収ができなくなってしまいます。
・前述したェイト環の仮固定技術が必要となります。
<中間テラスでのビバーク(露営)>
・ビバーク地の選択
−岩場でのビバークポイントはそのテラスでのビバークが何人可能なのか、ツエルト
等を使用することができるのか、落石、落市、雪崩等を回避することができるのか
気象条件は大丈夫か(昼と夜では風向きが変わることもある)安全確保を確認した
上でビバ一ク体制に入ってください。
−沢でのビバークは気象情報を良く確認してからビバ一ク地を選んでください。ちょ
っとした雨でも鉄砲水となってしまいますので水線より高い位置1にビバークサイト
を選択してください。
・ビバーク方法
−岩壁ビパーク、雪面ビバークにおいてのビバーク条件としては、いかに快適にビバ
ークサイトを作れるかにかかっています。好条件に恵まれたビバークサイトがあれ
ば良いのですがそうでない場合、各自工夫をして快適なビバークをしてください。
・テラスでのツェルトの張り方
−テラスにロープを横張りしてデラス全体のビレーとします。ツエルトのべンチレー
ターにロープを通しツェルトの高さに固定します。このロープがツェルト内のビレ
ーとなるのでしっかりと FIXすること。ビレーは必ずダブルロープでセルフを取っ
てください。
|
|
|
|岩小舎9トップ|無名山塾文書集トップ|無名山塾ホームページ| |
|
2002 Company name, co,ltd. All rights reserved. |