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岩小舎 9 |
阿弥陀岳南稜 |
97.3.8〜3.9 講習会 |
佐藤仁志 |
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◆「舟山十字路まで」
夜行で茅野駅に降り立ったのが午前3時過ぎ。駅の通路で1時間ほど仮眠をとってから、予約したタクシーで八ヶ岳へ向かう。そろそろ夜が明けてこようかというところ、八ヶ岳の上、東の空にはヘールボップ彗星が明るい。別荘地を抜ける凍結した道路を行くこと小一時間、舟山十字路に到着。タクシーを下りて出発の準備をするうちにすっかり夜が明ける。
◆「旭小屋まで」
ところどころ凍りついた林道はすぐに雪道に変わる。先行パーティのトレースがしっかりついている。だらだらと登っていくと、破れ小屋といった感じに近い旭小屋に着く。ここでザックを降ろして小休止する。時計は7時過ぎであった。
◆「立場尾根から立場山まで」
旭小屋の前を抜け、山腹のジグザグ登りに取り付く。雪が少なく土や岩が露出している。右手には針金で柵が拵えてあり。入山禁止の表示がある。どうもきのこ採りに入る人がいるらしい。ほどなく稜線上に出る。ここからは一応雪道となる。立場山までほぼ一本調子の登りが続く。雪が斜面をならしてしまうため、夏道よりかえって歩きやすい。途中からアイゼンを履く。斜面が緩くなってくると、立場山が近付いている証拠。樹林が薄く透けてきて阿弥陀岳の巨大な姿が見えて来る。
◆「立場山からP3まで」
立場山からは進路を北に変え、やや細い平坦な稜線通しとなる。木立ちも疎らかつ背が低く、阿弥陀岳、赤岳は無論、南アルプス、北アルプス方面の眺めが良い。快晴無風、順調すぎるコンディションとなる。もう一度樹林の中の急な登りをこなしたところで、ハーネスをつける。この先ですぐに樹林帯を抜け、いよいよ岩稜帯の核心部に近づく。当初の予定では、この辺でツェルトビバークであったが、天気が良く時間も早いので、阿弥陀岳を一気に抜けることになった。
◆「P3から頂上直下まで」
P3からは顕著な岩稜帯で、基部にはそれを示すプレートがあった。直上するルートもあるようだが、左側のバンドを巻いていわゆるP3ガリーに入る。雪が少ないので、却ってコンディションが良くないとのこと。45mザイルを一杯に伸ばして立木を支点としてフィックスし、ブルージックで確保しながら登る。結局、P3はザイルを3本固定して抜ける。支点は全て灌木を使っていた。これでほぼ頂上直下まで来たことになる。もはや権現岳も低く見えるくらいだ。
◆「頂上直下から山頂まで」
稜線上を少し歩き、最後の岩場に入る。これも左側のバンドを巻くようにしてから岩の間をとりつく。ところどころ古いハーケンが打ってある。雪はほとんど無く、夏道のようになっている。最後の10mほどの登りは、腐った雪を踏み抜きながらの登りになり、登り切ったところが山頂であった。阿弥陀の石像が雪で首まで埋まっていたので、積雪はおおむね1m位だろうか。360度に開けた素晴らしい展望を満喫した後に行者小屋まで下る。午後に入って天気は少し荒れてきたようだ。
◆「山頂から行者小屋まで」
阿弥陀岳と中岳のコルへの下りは夏道も急だが、雪がつくといっそう急に思える。比較的よくしまっている雪を一歩一歩慎重に下る。滑落したら大怪我しそうである。コルからは沢筋を下る。これもこのところ雪が降っていないという情報に基づくもの。斜面に雪がついていたらどんなところでも雪崩の可能性がありと思わなければならないとのことであった。仮にこの沢筋が危ないと思えばどうするか。コルから阿弥陀岳の北面をトラバースして北尾根を辿って降りることになるだろうとのことであった。泊まりは赤岳鉱泉付近に変更される。
◆「赤岳鉱泉からジョウゴ沢」
翌朝天候は悪化していた。阿弥陀岳も雲の中で、こんなコンディションで登らなくてすんでよかったと思う。ひょっとしたら撤退ということになったかもしれない。この日はジョウゴ沢のF1付近でアイゼンワークの練習をする。入山者の多いショウゴ沢までは、よく踏みならされた道になっていた。F1は8m位の滝で、ここでザイルを2本ほど掛け、ダブルアックス、シングルアックスなどで登る。アイスクライミングというと、フロントポインティングというイメージが強いが、昨日のミックス登攀を踏まえ、基本に戻って足をフラットに置けるところはフラットに置くことを再確認した。なかな
か気温も上がらず、午前中で引き揚げる。
◆「赤岳鉱泉から美濃戸口まで」
ゆく踏みならされた道を行く。さほど急なところもないので、アイゼンははずしていく。美濃戸の小屋付近まで来たところで天気も回復してきて、青空に白い阿弥陀岳がズドンと聳えていた。夏と違ってちょっと見ごたえがある。天気に恵まれて素晴らしい山行になったことに感謝した。
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