岩小舎 9
早月尾根から剣沢野営場
1996・8・14〜16
沢口千鶴子
 十四日、八時晴天馬場島より早月尾根の始まり。最初より急登ながらマイペースのビスタリーを意識しながら、まずまずの歩きだった。が、三ピッチを過ぎるころ頃から汗が頭から吹き出し始める。「バテないために疲れる前に食べ物をとり、水を飲む、を言い訳にそれからは三十分登っては十分休み、一時間歩いては大休止・・・と乱れに乱れたピッチとなる。重さを極端におさえ十七〜八Kgのはずのザックがだんだん重くおもくなる。それでも道は歩きやすく、樹林帯はで日影が多いのに助けられて一六〇〇mを過ぎたあたりでは七時から歩き始めたというた九州男児(中年)三人組に追いつく、少しゆるくなって、ほっとするもつかの間、またすぐ急登りの連続でひたすら木にすがりピッケルに換えたストックに荷重をかけての登りだった、一八〇〇mを過ぎ、岩っぽい急登の途中で突然視界が開け、細い雪渓を二〜三本引いた赤谷山らしい山、そしてなんだかわからない山、山、登り始めて始めての感激をしたのでした。でもそこから小屋の屋根が見えるまでのなんと遠かった事か、汚い残雪、池糖らしきもの、なかなか表れない避難小屋跡、そしてロープの下がった最後の登りの後、小ピークからすぐ下に青い屋根が見えた時、第二の感激、長かった、よく歩いた、そこで残しておいた水を全部飲み大休止をしたのでした。二時四十五分小屋着。
 十四日夜半台風直撃、十五日風雨残り停滞、その中を一日おくれのHとT嬢が力強く登って来て、小雨の中テントを張る、山塾の名を汚さない二人、私は小屋泊まり。ウーン。
 十六日時々小雨の中、六時すぎ三人で出発、岩場の尾根もそれほど苦労ではなく後半連続の鎖場も登りだったため難しくはない。エボシ岩、シシ頭、カニのハサミも確かにこことわからない内に過ぎた。十時本峰着、そこでなんと幸運にも長次郎谷を登って来てまさに下り始めたなつかしい山塾の面々と会う、又々感激。だがそこからの下りが今回一番の核心部だった。今まで四回の本峰からの下りでほとんど感じたことのなかった恐怖、今回のカニの横バイの第一歩はまさに恐怖だった。ぬれた鎖のこわさ、鎖に振られるという事、重荷での岩場の下りの恐ろしさを十分経験した。疲れが足にきて、そういう時の下りは細心の注意が必要という経験もした。今回は早月尾根から剣沢へ下っただけの山行で、他のコースへは参加できなかったが、納得のできる山行であった。(ハシゴ谷乗越がなくなったのは実に残念)、又いつか今回よりもっと軽い荷物でゆっくり楽しみながら早月尾根をのぼってみたい、そう思わせる尾根だった。
 
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