フルスタリョフ、車を! アレクセイ・ゲルマン監督 仏露合作
舞台は1935年モスクワ。主人公はモスクワの病院の脳外科医にして赤軍の将軍、ユーリ・クレンスキー。家族・愛人・病院を行ったり来たりの生活。だが、スターリン指示による、KGBのユダヤ人医師迫害の陰謀に巻き込まれてしまう。これを拒んで逃げる将軍だが、結局捕まってしまい拷問の末、どこかへ移送。だが、突然解放され、スターリンの側近に、ある要人の診察を命令される。とか書くと、なんだか重い映画のように感じる。私もこの映画のストーリーを事前に見たときは、陰謀渦巻く戦前ソ連を活写したものだと思った。蝦夷地別件を読んで、革命前後のロシアに少し興味を持ったから、ちょっとインテリっぽく決めてみようと思った。
だが......一体何なのだろうか、この映画。
最初のシーンは静かに始まるものの、いきなり「コンドーム」とあだ名される奴が車から出てきたロシア人に連行されるところから、もう何が何だか分からない。登場人物は全く記憶できないほど出てくるのだが、それぞれが言っていることに脈絡が無く、とにかく凄い勢い。おいおい、このテンションで最後まで行くのかよと思っていたら、最後の最後までこのテンションだった。ストーリー展開は全く以ってついていけない。脈絡が無いように見えるからか。くぅ〜、俺の読解力の問題か?さらに、モノクロではあるのだが、画面を彩るのは様々な液体だ。最も多いのが唾であるが、とにかく何もかもことごとく登場人物たちはぶちまける。そして、女の裸体は全く出ず、出るのは男の裸体(しかも股間にボカシなし)だったり、男同士の乱交があったりで、はっきり言って大騒ぎ。主人公の将軍の奴は、スキンヘッドに髭で平口広美(AV男優;島のHPのブックレビュー参照)みたいだし、その他の登場人物も、一人として狂っていない奴はいない。しかも、これはロシア映画なのである。仏露合作で、なんだかタイトルとかもフランス語ではあるのだが、露西亜の息のかかった映画がこれなのか?
映画を見る前、「あー、映画感想文の最初はこの映画のレポートだな」と思っていたのだが、いきなり私の能力を超えたモノを見てしまった。とにかく、訳が分からないから、内容について何もコメントできん!ゴメン!
ただ、私がこの映画を見ているときずっと感じていたのは、先日の金正日の姿を見たような感触だ。あの男、無茶苦茶喋るじゃないか。あの男、無茶苦茶笑っているじゃないか。などという、「え、こいつこんなことするの?」と言うような感触である。パフォーマンスだけなら、プチン大統領を超えているという(私は金正日はどう考えてもプチン大統領程度の対応だと思っていた)感じすらする。それと似た感触が、この映画を見ながら感ずるところとなったのだ。上述したが、私はロシアの人間はこんなじゃないと思っていた。最近はかなり人心も変わってきたと言うのは、辺見庸の著作を読んだり、実際にトルクメニスタンやらロシアに仕事に行った経験のある会社の先輩から聞いたりで分かってはいるつもりだった。だけど、だけどねえ...まさかこんなにもopenになっているとはなあ。
死語ではあるが、これは精神のペレストロイカか.....?なんだか、酒飲みまくった後の「ぅぅ、俺は絶対にぃぃぃ.....ぅ俺はぁ(直後ゲロゲロゲロゲロ)」みたいに、私が先日桜木町で見た若い奴のような、異常なテンションの映画だった。理解不能ということだが。見終わった後の爽快感は無し。頭が痛くなって、現在やや熱があるほどだ。それはお前が風邪気味だったからだろって感じだが、頭を抱える人間は少なくないだろう。終わった後で、パンフレット買っている人が多かったが、あれは感動したからなのか、それとも話が何だったのかを確認するためだったのか?
とにかく、開始20分くらいで鼾をかいている客もいた映画。金返せと言いたくなる人もいるだろうが、一応情報は以下に。観ても観なくてもどうってことは無いが、ロシアの今はこうなっているのを知りたい人は是非。