あとがき


この12話は、私が2000年3月18日〜25日にイスラエル旅行をしたものの旅行記です。8日間のうち、2日半程度を日本からの移動に充てたため、実質的には5日半程度の短い旅行となりましたが、学生生活を通じて行った海外旅行の14回目となるこの旅行は、学生生活に行った旅行の総集編とも言える内容になりました。

遠藤周作を読まれる方は、最後の長編「深い河」を読まれたと思われます。あの作品は、あの作品のみを読んでも十分よい書物ではありますが、その他の遠藤作品を読まれた方にとっては、これが遠藤周作の小説家人生の総集編であることが分かるでしょう。彼自身、これが自身最後の長編という心で取り組まれたというのは、若い私にもよく分かります。

私自身にとって今回の旅行は、上で述べた遠藤にとっての「深い河」と言う作品のようなものとなりました。学生時代を通じて行ってきた旅行の、全ての要素がこの5日間に集約された旅であったと思います。今後、このような旅をすることは無いでしょうし、そして出来る筈も無いでしょう。そのような最後の旅を、大学時代に出会った遠藤周作という作家の影響で、イスラエルで行うことになったのは、正に偶然と言うほかありません。しかし、この経験がいつの日か「約束された必然」となり、自分自身が何らかの転向をするという可能性は、無いとも言い切れません。

書き終えるのに2ヶ月近くを要しましたが、それでも書いていないことはまだかなりあります。しかし、今回書いた内容は旅行の核をなすところなので、これで全てを語ったと言って十分だと、自分では考えています。

最後に、このような機会を与えてくれた亡き作家遠藤周作と、文句を言われながらも最後まで付き従ってくれたあの「黄色い背表紙のガイドブック」に、心から感謝の意を表したいと思います。

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