1. 私からラホールへのメール「状況如何でしょうか」

ラホールでの状況は如何でしょうか?昨日こちらのニュース番組で見たところでは、クエッタやペシャワールでかなりの規模のデモが起こったとの由。ただ、その番組では今のところイスラマバードは平穏とのことだったので、ラホールも通常どおり、平穏であると思います。

ただ、こちらとしてはパキスタンの状況を憂慮しています。と言うのも、こちらのマスコミもセンセーショナルなケースを重点的に流すケースの方が多く、こちらで正確な情報を掴むと言うのは、かなり困難です。従いまして、そちらの状況に関して問い合わせた際、ラホールの現況についてお知らせいただくようお願いいたします。また、不穏な情報を掴みましたら、すぐに連絡頂けるよう、重ねてお願いします。

とにかく米軍と英軍は、ラマダン前には攻撃を停止すると、私は考えています。どうせ民間の死傷者も既に出ていると思いますが、パキスタンに飛び火することはまだ無いようなので、最小限の安心はしています。個人的には、こうなった以上はこれ以上の被害の拡大が進まない事を祈るしか出来ません。

2. ラホールからの返信「現状平穏です」

ラホール、およびパキスタンに関して、今後は定期的にそちらに報告するように致します。現状ですが、ラホールやイスラマバードは平穏で、問題は特にありません。ただ、クエッタとペシャワールでは民間人死傷に抗議するデモが発生しています。日曜に米英軍が攻撃を開始したのはご存知の通りと思いますが、すでにアフガンではかなりの数の民間人が死傷しているとのことです(CNNやBBCはまだこれに関して報道しておりません)。とにかく我々としては、この攻撃が短期で終結することと、状況の平穏化が進む事を望みます(我々は祈ることはできます)。ご指摘のとおり、11月16日よりラマダンが始まります。攻撃がそれまでに停止するよう祈っています。今までのところ、ラホールや他の大都市において、大規模な反戦デモは起きておりません。しかし、もし米軍がアフガンで殺戮を継続するようならば、どうなるかは分かりません(この状況が発生しないよう、祈るしかありません)。

3. 会社上司への報告メール「ラホールの現状について」

毎日ラホールとは連絡を取り合っていますが、現在のラホールについて私が把握していることをお知らせします。

まず、ラホールや首都イスラマバードは現状では全く平静だそうです。報道等でデモ風景などが報じられましたが、あれは国境付近のペシャワールならびにクエッタであり、ラホールからはかなり遠い場所です。ただ、状況によっては11月以降に注意が必要です。

北西辺境州の州都ペシャワールやバローチスタン州の州都クエッタは、アフガン国境に接している州の州都であり、アフガニスタンの主要構成民族であるパシュトゥン人が多く居住する地域です。また、国境地帯におけるパシュトゥン人の自治形態はパキスタン政府から広範囲で容認されているため、パキスタン政府としてもあまり強く取り締まれない環境でもあります。したがって、@アフガンに対する米軍の攻撃に対しては極めて敏感なパシュトゥン人が居住し、A政府も強く取り締まれないと言う環境ゆえ、デモ等も起きやすく、また拡大しやすいという地域的特性があります。国境付近に比べてそれ以外の都市が平穏なのは、パシュトゥン人がいないこと、軍事政権である政府の睨みが利きやすいというのが決定的な理由かと思われます。ムシャラフ軍事政権の国内統治は今のところ安定しており、国民からの支持も一定以上あるようです。

したがって、ペシャワールやクエッタでの動きをパキスタンの動きとして同一視するのは早計かと思われます。また、パキスタンにおける原理主義者人口は全人口の5%(それでも約600万人くらいですが…)程度で、その多くはカシミール(北部)とアフガン国境地帯に集中しています。したがって、騒乱が起こるにしてもラホールが前衛になるとは考えにくいというのが、私なりの分析です(全然外れたりして....)。

ラホール事務所のスタッフによれば、ラホールはインド国境に近い割には政治的には穏健な土地であり、原理主義者勢力も聞いたことが無い程度の規模だそうです。何が起こるのかは分かりませんが、今回の騒ぎで影響が及ぶのは、恐らく最後の方であると思います。したがって、不穏な動きを察知する時間的余裕があるため、横浜とのやり取りで対策を講ずることは出来ると思います。

向こうの責任者のFさんによれば、現状では礼拝の時間に平和祈念するという状況で、大規模なデモなどが起こる心配は今のところそれほどありません(大体デモ開催は事前に分かる)。しかし、来月中旬からのラマダン期間中にも米英軍が攻撃を継続した場合は、対立心が一気に高揚し、ラホールですら予断を許さなくなるかも知れないと連絡を受けております。従いまして11月に向かって米軍の攻撃が収まりを見せないようならば、こちらとしても真剣に対応策を練る必要があると思います。

とにかく、ラホールとは毎日連絡を欠かしておりませんし、何か不穏な動きがあるようならすぐ連絡をするよう、Fさんともお互いに確認しています。こちらとしては出来るだけ冷静に、正確な情報を掴むことを心がけ、報道等によって過大/過小な心配をしないようにするよう注意いたします。

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