色々やばい


アメリカがラディン一味に対する報復攻撃を開始した。現在、アメリカは同盟国、および協力国にラディン関与の証拠を提示し、攻撃への同意を得た直後と思われる。だが、ラディンが攻撃目標として認定できても、武力行使はちょっと待って欲しい。タリバンの態度変化を全く無視した態度に問題がある云々以前に、ラディンを捕らえるためにアフガン国土を荒廃させる筋合いが米国に果たしてあるのだろうか?今回の攻撃で、結局憎悪を増幅するだけと言うのは、私だけの考えだろうか?

事態の悪化:西南アジア情勢(9月16日分日記)

今までは米国の本気に対し、何とか収拾しようという姿勢が見られたタリバンだが、遂に真っ向勝負体勢に入ってしまった。米国は手綱を緩める気配全く無し。最早激突は時間の問題である。また、タリバンは米国に協力する周辺諸国に対し報復攻撃の可能性を示唆したものの、パキスタンは当初からの米国支援案を変えることなく、まず領空通過を認めている。今後基地使用などが焦点になるかと思うが、パキスタン・アフガン関係は重大な岐路に立たされていると思う。

パキスタンにアフガンが攻撃を加えると言うのは、1週間前は考えられない事態だった。アフガンにとっては殆ど唯一の友邦と言っていいパキスタンに矛先を向けることなど、普通は考えられないだろう。パキスタンはタリバンを支援してきたし、タリバンはアフガニスタンを外交の窓口的な位置として考えているはずである。

パキスタンがアフガンのタリバンを支援するのは何故かと言うと、パキスタンにとってアフガンの安定はどうしても望むべきものだからだろう。ソ連撤退後の収拾のつかないアフガン国内で、急激に台頭してきたタリバンであるが、タリバンは現在アフガンの殆どを支配下に置き、各勢力の中で最もアフガン国内を安定させる可能性を持っている。ということは、パキスタンがタリバンを支援するのは、非常に自然な行為である。

何故アフガンの安定が必要かは、アフガンの地理的位置によるところが大きい。アフガンはパキスタンにとって、資源豊かな中央アジアや中東イランに抜けるシルクロードの要衝である。中央アジアのスタンが付く国には、パキスタンの北部から中国へ抜けるルートがあるが、これはトルクメニスタンとかウズベキスタンとかタジキスタンに抜けるにはそれ程良い道ではない。理由はまず、中国へ抜けるこのルートはそもそもインドとの係争地であり、インドの主張を容れるとすると、パキスタンは中国との国境線は無いことになる(つまりここはインド領)。こんな政治的に不安定なルートを動脈に出来るだろうか。加えて、この問題が無くとも、この辺りは地理的に非常に苦しい地区である。まず、中国との国境がK2を筆頭とするカラコルム山脈である。さらに、カラコルムを無事に越えても、西に折れて中央アジアに向かう道の整備はかなり難しい。パミール高原があるからだ。パミールを横目に見て、仕方なく北上して、西進の機会をうかがおうにも、パミールが切れると同時に天山山脈が現れる。箱根の山は天下の険どころの騒ぎではない。この辺は正に世界の屋根地区なのである。

もし、アフガンが平和なら、パキスタンから中央アジアへ抜けるルートは容易に確保できる。確かに、アフガニスタンは中央を海抜5000m級のヒンズークシ山脈が通っている。しかし、古都ヘラートまでアジアハイウェイA-2号線で抜ければ、北上してトルクメンに入るのは容易である。中央アジアとアフガン経由でガスパイプラインで結べば、アフガンとパキスタンは天然ガスを安価なパイプライン経由で獲得できるし、さらにアラビア海沿いに液化プラントを立てれば、LNGの出荷基地にもなる。

とか色々考えると、パキスタンにとってアフガンは「安定していた方が絶対良い」国であることは明らかである。というわけで、いくらテロ支援国家などと言われても、アフガンを安定化する可能性の最も高い、タリバンを支援したのでは無いか、と私は思っている(違うかな)。

しかしながら、タリバン政権のことを中央アジア諸国は面白くないと思っているに違いない。理由は、反タリバン勢力として北部に展開する「北部同盟」は、中央アジア系のタジク人とかが勢力だからである。だから、タジク人勢力を抑圧するタリバンに対し、国境を開くとはあまり思えない。さらにタリバンはイランからも評判が良くない。シーア派が政権を占めるイランは、スンニー派のタリバンがアフガン国内のシーア派トップを殺害し、シーア派を他のスンニー派諸国と同様に押しやっているからである。というわけで、いくらタリバンが国内を統一したからと言って、すんなり中央アジアやイランとのルートが確保できるとは想像しにくい。以上より、パキスタンにとってタリバンを支持するのは、経済的利益を得るには一長一短なのではないか、という側面も考えられる。

とは言うものの、長期的にはこれは継続すべき努力であり、アフガンルートはアフガン自身にとっても、中央アジア地区にとっても、パキスタンにとってもあった方が良いルートである。海上積み出し基地に出る最短ルートは、何と言ってもアフガン経由のパキスタンのアラビア海沿岸地域なのである。

だが、これは当面実現しそうになくなってしまった。

今回、パキスタンは米国への協力を承諾した。これは、パキスタンが怒りまくっている米国に立て付くのは得策でない、もし協力しなかったら他国からの外圧が気になる、そもそもあのテロは容認できない、など色々な思惑があると思う。だが、現在パキスタン財政は火の車である。核実験によって経済制裁を受け、その後経済的に全く安定していない。もしこれで協力しなかったら、全然経済支援が得られないどころか、ますます支援や投資が遠のいてしまう。パキスタン経済にとって、他国の支援は糖尿病患者のインシュリン投与と同じくらい、不可欠なものになってしまっている。と言う訳で、今回米国の協力要請を受けることで、少なくとも米国の消極的な姿勢は和らぐだろう。そして、日本の支援も昔のように復活するかもしれない。パキスタンにとって、経済支援が最も多かったのは日本だが、その日本は核実験に対し極めて敏感で、一気に支援をゼロにしてしまったのである。これは相当の痛手だが、今回の協力で復活するんじゃないだろうか。背に腹を替えられないパキスタンは、タリバンを裏切らねばならない。

俺はあのテロのやり方、やはり間違えていると思う。解決法は、もはやタリバンのラディン引渡しだけだと思うが、タリバンは抗戦の姿勢を鮮明にしているだけに、それは最早期待できないだろう。そもそも、ラディンが本当に首謀者なのかどうかも分からないが、興奮した米国が決め付けて攻撃するのは時間の問題だ。あのテロは、ひょっとしたら殆ど関与の無いかも知れないラディンすらも壊滅せしめる可能性がある。テロリストの壊滅は歓迎すべきことかもしれないが、誤認で壊滅は間違えている。また、真犯人はまだ壊滅していないと言う点でも、完全に敗北である。

アフガン安定はパキスタンの国益にもかなうものだった一方、純粋に平和の実現に向かうものでもあった。それは、今回のテロでほぼ台無しになってしまう。今後死んでも生きても、あそこに住んでいる人たちには地獄にしかなり得ない場所になる,p.。世界貿易センターとペンタゴンと西南アジア、今回の事件は地獄しか作り出さないものである。ジハードって、一体何なんだよ。■

事態(9月19日分日記)

パキスタンの状況は相変わらず色々報道されているが、相変わらずラホールは平静で、子会社の仕事も殆どschedule通りに進んでいる。向こうのスタッフとは毎日連絡を取っているが、ラホール以外も殆ど混乱は無いらしい。向こうのチームトップのF氏によれば、彼の友人で他の都市に住む人からも、いつもと変わらない生活を送っていると伝え聞いているそうで、未だに日本人が慌てて帰ったことに合点が行かない様子である。彼曰く、「国境付近以外は今のところ全く変わりが無い」そうである。そんな当地の状況であるが、日本はそういう認識はしていない。本日、部長を通じて会社通達がなされたのだが、あの周辺のスタンが付く国は正式に出張禁止になった。その中には「アフガニスタン」も含まれていた。アフガンはそもそも前から行ってないだろ。

いつ頭上をミサイルが飛ぶか分からない、だから行くのはもう考えるな、と上司から散々言われた一昨日と昨日。禁止命令が出て、完全に諦めた。今出来るのは日本から祈るのみである。あと、クッキーが好きなS氏に、マリークッキーでも送るかな。■

認識(9月24日分日記)

昨日、何も掛けずに昼寝したのが不味かったのか、本日は風邪気味で、やや微熱と言う感じです。我々にとって「微熱」というのはかなり恐いシグナルで、凄い伝染病の初期症状だったりしますので、帰国直後にこういうのが来ると、やや緊張しますね。

さて、今回の事件。

「世の中のことについて、一定以上の考えを抱いている」と自覚している人の、今回の事件に対する考え方は一体どうなのか。私の認識している限りでは、次のようなものが上げられると思います。あるメーリングリストで流れて、賛成の嵐が吹き荒れたヤツで、

「罪無き民間人を無差別に殺すとは、最早議論の余地は無い。また、議論など受け付ける必要も無い。対話で解決しようなどと言うのは、平和ボケした日本人の甘い考えで、実力行使でテロリストに徹底的に知らしめる必要がある」

というのが要旨です。「平和ボケしてて実力行使の恐ろしさを知らない日本人らしい発想だ」という論調で返すと、返信どころかMLへの投稿すらありません。また友達を減らしてしまったようです。

というわけで、心身ともに穏やかじゃない最近なのですが、これに関してはもうちょっと考えようと思っています。今でも、実際の軍事行動には私は反対です。■

パキスタン子会社へのメール(9月28日分日記)

Fさん

これは仕事のメールじゃなくて、アメリカで起きたあの事件と、アフガンで起ころうとしている紛争に関する個人的なメールです。仕事後にでも読んで下さい。

ラホールに戻ってからFさんと話そうと思っていたのですが、生憎戻る事は出来ません。というわけで、メールで私の考えを伝えたく、したためました。

あの事件に遭遇して以来、あの事件と、パキスタンとアフガンの現状について、私はずっと考えてきました。いくらテロリストに彼らなりの考えがあったとしても、私はとてもあの攻撃は許容できません。多くの無実の人間の命が奪われたということ、とりわけ武器として使われたのが最新兵器でもなく、自殺テロでもなく、無実の人間が乗った旅客機だったというのが、その理由です。このようなことは私の想像の範囲を超えており、あの事件が起こった瞬間、正直何が起こったのかまるで理解できませんでした。とにかく、あの事件は私が見た中で最悪のもので、百歩譲ってテロリストのスタンスを理解するにしても、納得は絶対に出来ないものです。

しかし、アメリカの軍事報復に関しては、これにも私は反対の立場です。理由はアフガンの無実の民も殺されるであろうこと、そしてひょっとしたら、パキスタンの無実の民も殺されるかもしれない、ということです。アメリカはラディンを容疑者と考えていますが、我々はアメリカの持つ証拠と言う奴を見たことがありません。アメリカは単に「証拠を持っている」という、全く不合理な主張を繰り返すだけで、決してそれを公表する事はしていません。アメリカはアフガンに証拠を提示することなく攻撃準備を続けており、さらに悪い事には、他の国(私の国も含みます)までもがアメリカ支持に回っています。私はアメリカが証拠を提示することなく攻撃する事は、許容できません。

仮にアメリカが証拠を提示することになっても、私は「武力」報復には反対です。理由は極めて単純で、どうして周辺に住む人々が紛争に巻き込まれなければならないのか、と思うからです。今回の事件はニューヨークやワシントンの無実の民同様、これらの人々には全く無関係です。アメリカは民間人を攻撃対象にしないと言うでしょう。しかし、それは可能なのでしょうか?全く民間人に死人が出ないとは、とても言えないと思います。さらに私が考えるに、問題は攻撃前よりむしろ攻撃後であると思っています。アメリカの凄まじい攻撃によって、アフガンとその周辺地域は間違いなく荒廃するでしょう。つまり、そこに住む人々は、この荒廃した土地で生活を続ければならないと言う事です。アメリカは単純に、民間人に攻撃を加えなければそれ程問題はないと考えているかもしれません。しかしその土地を攻撃すると言う事は、彼らの家を攻撃するのと全く同等であり、家を攻撃すると言う事は、つまり民間人である彼ら自身を攻撃する事とも同等と言えると思います。加えて、アメリカはアフガンに対する経済制裁を継続するでしょう(さらに、他の国にもアメリカの経済制裁に追随するよう要求するでしょう)。そうなったらアフガンの人々にとって、これ以上不幸な事はありません。

今回の事件に関し、もうひとつの懸念事項があります。それはパキスタンとアフガンの関係についてです。我々日本人は、西南アジアの状況について、それほど明るくはありません。しかし、パキスタンがアフガンにとって最も関係の深い国であることは、私は知っています。もちろん、私はタリバンの教義についてよく分かりませんので、パキスタンがタリバンと通じていることが理想的であるかは分かりません。しかし、パキスタンとタリバンの良好な関係は、西南アジアの安定に貢献していると考えられます。しかし、パキスタンは今回、来るべきアメリカの攻撃を支持する考えを表明しました。タリバンはこのパキスタンの姿勢を、裏切りと取ると思います。したがってアメリカの攻撃後、パキスタンとアフガンの間に余計な緊張が生ずる事が、私には予想されるのです。

以上のような理由より、アメリカは西南アジアに住む人々に不幸しかもたらさないと考えられます。それゆえ、私はアメリカの攻撃に反対しているのです。

もし、あの事件が起こったときに私が日本にいたら、こんな風には考えなかったと思います。しかし、あの瞬間、私は明らかにパキスタンにいたし、そして今でもパキスタン人であるあなた方と働いています。だから、私はパキスタンの現状を無視する事は到底出来ません。

確率は低いと思います。しかし、私はアメリカの攻撃が中止になるのを、祈っています。■

パキスタンからの返事(10月2日分日記)

パキスタン子会社のFさんからメールが届いた。特に目新しいことは無いと思うが、今回の事件の捉え方が異なると言うのは、分かると思う。

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こんにちわ、岩田さん

先日のメール、ありがとうございました。岩田さんの考えを読み、非常に嬉しく思います。パキスタン人ならば殆どの人がこのように思っているでしょうし、多くの日本人がこのような考え方であればと願うばかりです。岩田さんのおっしゃる通り、世界中のどこでも、無実の人々の命が国によって奪われると言うのは以ての外だと、私も痛感しています。今回の(米国の)行動に対して私自身は非常にショックを受けていますが、これに賛意を表する人は誰もいないと私は信じています。

人命の重さに、軽重はありません。アメリカ、アフガニスタン、カシミール、パレスチナ、ボスニア、どこにいようが生命の重さは同じ筈です。最近では毎日のように、イスラエル人がパレスチナの人々を殺しているというニュースが流れます。またカシミールでは、多くの若い兵士が、インド軍に殺されています。このように、無実の民が殺されると言うのは、信じがたいことです。

アメリカは現在、アフガニスタンをテロ支援国家(と言うより国自体をテロリスト)と認定しています。しかしアメリカが反ソ目的にアフガニスタンを支援した際、アメリカはアフガニスタンを、ロシアと戦う勇敢な国だと称えていました。そして、いざアフガニスタンが国内の復興が必要となった時、こともあろうかアメリカは、アフガニスタンを去ってしまいました(ロシアを駆逐したと言う、アメリカの目的を達成した後です)。従って、アフガニスタンは対ソ戦後荒廃したまま残され、さらに国内には対立する数々の勢力が勃興しました。食料が不足し、健康状態が悪化し、教育の整備が立ち遅ると、結局このような状況にまで達してしまった原因について、誰でも考えるようになります。これが、アフガニスタン人がアメリカ人を憎む源泉になったと、私は思います。

ラディンはアフガン/ソビエト戦争において、アメリカに支援を受けて戦ったという人物で、彼はCIAから訓練を受けたという経歴があります。そのラディンは、現在証拠も無くテロリストと断定されています。アメリカは、アメリカの意向に反抗する国は、すべてテロ国家と断定します。イラク戦争(湾岸戦争)では、アメリカはイラクの産業を壊滅させただけに止まらず、乳児向けのミルクの供給まで停止しました。これで多数の無実の子供が餓死しました。(ミルクの供給はUNOが管轄ですが、UNOは完全にアメリカの支配下に置かれており、食料や医療物資の供給停止を指示されましたのです)。力の均衡が破れた時、不正義は常にこの世に現れるものだということは、よく分かると思います。ソ連が凋落した後、均衡はアメリカに傾き、そしてその後のアメリカはやりたい放題です(私はテロリズムを支持していると言う訳では決して無く、今回の事件が起こった背景について知って欲しいのです)。今回、アメリカの報復がなされるでしょうが、これによってアメリカ人自身が、全ての民族の血は等しく重いものであると、理解してもらいたいと思います。

しかしながら、何故無実の人々が犠牲にならねばならないのか。これを全世界の人々、そして全世界の政府は、よく考え、そしてよく認識すべきだと思います。

最近のニュースによれば、アメリカの工作員がラディン捜索のためアフガンに潜入したそうですが、現状ではまだ捕獲に成功しておらず、しかも3名の工作員がアフガン側に拘束されたとのことです。私の期待に過ぎませんが、アメリカは戦火を熾さず、ラディン逮捕に注力するかもしれません。(とは言っても、ラディンを逮捕して殺害すれば、問題は解決するのかも疑問です)

ここラホールや他の街は、今のところ平静です。大きな戦争が起こるとは思えないほどです。

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これは現代の地球上に生きる、イスラム教徒の極めて平均的な考え方であると思う。今回の事件の痛ましさは分かるものの、問題の種を蒔いたのはアメリカ自身である、という強い認識である。この件に関しては、他国でも報じられていると思うが、どうもタブー視されている印象があるし、さらに今回のテロ事件のインパクトが強すぎるため、あまり目を向けられていないという印象もある。しかし、ムスリムにとっては、これが最も憂慮すべき問題と捉えている節がある。 アメリカは何だかいつの間にか国内問題に介入してきて、利用できる時は利用するが、自分に不利になったとか利用価値が無くなった時点でいきなり姿を消すと言う印象が、ムスリムたちの怨念の素となっている。パターンとしては、中国国民党政府を支援し、結局国民党軍が敗走した後、アメリカは中国大陸から姿を消した(これはムスリム社会ではないけど)。イランでパーレヴィー朝を支援していてホメイニの革命組織が勝利に近づくと、パーレヴィー朝を支持する右派を置いて帰ってしまった。旗色が悪くなると帰ってしまうのはアメリカ側の論理からすると当然だが、残されたその土地の人間たちは、アメリカの介入で火に油を注がれた内戦で荒廃した土地を目の前にして、ただ呆然とするだけである(そもそも、国民が受け入れを歓迎している新政体である中共軍やホメイニに対し、力で刃を向けると言うのは、民主主義と逆行した行動である。しかも外国人だろお前らは)。そしてその呆然と立ち尽くした後に意識されるのが、アメリカに対する怨念である。アフガンの時は勝利したが、アメリカは勝利を置いて帰って来た気でいるのだろうか?その後のアメリカの完膚なきまでのアフガンに対する無関心は、内戦で餌を与えられた国内勢力が、国内で狼藉を働いても止めるものがおらず、助けて欲しい所で援助を急激に減らしたアメリカに対する、屈折した怨念が溜まって行ったのだと思う。

昔は支持していたのに、今は全く逆で攻撃をしようとしている。これはムスリムたちには堪らなく不快な事である。アメリカがアフガンを攻撃したら、今後もムスリムはアメリカを憎みつづけるだろうし、関係ないアメリカ民間人を殺傷するという、また不快な事件も起こすと思われる。ラディンを捕獲して殺害しても、根絶やしはされていない。もし根絶やしにしたいのなら、アメリカは全てのイスラム教徒を屠らねばならないだろう。さもなくば武力でイスラムの反感を削ぐ事は、全て不完全なものに終わるだろう。 つまり、報復は新たな犠牲と、新たな怨念を生むだけのものであり、だから私は報復の意味が分からないし、賛成もしかねるのである。■